・・・日本男児たるもの、寿司のひとつ握れなければならぬ。
というくらいに、プレッシャーがかかっている、ような気がする。
ブラジル人ならば、日本人シェフには「スシ」を期待するだろう。
それくらいに、街にはテマケリア(『手巻き寿司の店』的な造語)があふれてる。「ポルキロ」というブラジルスタイルの量り売りランチ店でさえ、巻き寿司はサーモンの握りとともに必ず一角を抑えている。とにかくここサンパウロでは、おそらく他のどの外国都市でそうなっているよりも、スシは有名だ。
来る水曜日8/8、私はJapan Nightを主催することになり、一人日本人シェフとしてその腕を振るうことになった。場所はいつも弊社が商売上大変お世話になっているコーヒー農園。今年何度も日本からのお客さんを受け入れてくれた場所。お返しに何が出来るかと考え、和食ディナーを振る舞うことにした。そのコーヒー農園には立派なゲストハウスがあり、当然キッチンも立派にしつらえてあり、専属のGasparinaさんがいつもおいしいComida Mineira(ミナス州の料理)を作ってくれる。
その場所をお借りして、料理をすることになった。献立は、
太巻き寿司、豚汁、野菜天ぷら、鶏の唐揚げ、揚げ出し豆腐的な小鉢。
鶏の唐揚げは小生の得意技、揚げ出し豆腐は居酒屋魚民でバイトしていた時にさんざん作らされた逸品で安定感は抜群だ(笑)。豚汁、天ぷらもやれないことはないだろう。ただ、寿司は一度も作った経験がない。でもブラジル人は寿司が大好きだ。だから、Japan Nightでこのメニューを外すわけにはいかず、入れてしまった。さすがに握りは素材が調達できないだろうから、せめて巻き寿司にしてみようと。
サンパウロは東洋人街リベルダージにある日本食材というかもはやアジア食材総合スーパーである『丸海』にて仕入れを終えた。なんと巻き簾もあり、海苔も高価ではあったがよさげなものを調達できた。高級日本米含め、〆てR$266(約12,000円)の仕入れだ。食材は抜きである。うーん、気合十分だ。しかし不安だ。スシが不安だ。酢飯すらつくったことがないんだ。
仕方ない、リハーサルだ。
食材は買ってなかったが、家にあったツナ缶を破壊し(缶切りが必要なタイプであったことを買った後で知り、しばらく眠っていたシナモノ。缶切りは船便ですぐ到着するから買いたくない。今日は不安が勝ち、意を決してベランダのコンクリートに置いて堅い金属で上から何度もたたき、ムリヤリ開けた・笑)、何故か冷蔵庫に残っていたズッキーニを軽く茹でてきゅうりに仕立て、ツナキュウリ太巻きに挑戦する。
炊飯器は当然無く、鍋も小型の雪平鍋一個のみだ。ふたもない。かつてボーイスカウト時代に習ったアルミフォイルでふたの代用にして炊く方法にトライだ。しかし昔も習っただけでやったことはない。何故ならいつも装備は揃っていたからだ。なんとか炊けた。水分が少し多かった様だが、奇跡的に焦げずにしっかりと炊けた。リハーサル用シャリの役は十分に果たすだろう。
酢飯を作る。ミツカンさんの「すし酢昆布だし入り」で楽をさせてもらう。簾に米を並べる。巻きやすい量が不明だったがYou Tubeに巻き方が出ていた。ツナマヨとズッキーニを載せ、You Tube通りにくるくる巻いてみる。ご飯が水っぽかった上に寿司酢でさらにゆるくなり、また水切りが出来ないツナマヨとズッキーニのせいで水分がすごい。だいぶゆるいぞ。
切るときも、ゆるゆるなので苦労した。見てくれはだいぶ不細工だ。しかし不安は解消した。このリハーサル、やってよかった。だってこの不細工な仕上がりでも、街のポルキロよりはだいぶ素敵な雰囲気を醸し出していたから。うーん、そこはやはりニホンジンというところか。水曜日が楽しみになってきた。
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| リハーサル巻き寿司 |