サンパウロといえば人口11百万人の南米第一の大都市であり、弊社事務所はそのサンパウロ市街中心部にある。意外に思うのが、この都会のど真ん中で、店舗を持たずに青空でモノを販売する商人をしばしば見かけることである。
店舗を持たず一人で全てを取り仕切るそのスタイルは、見方によれば固定費をぎりぎりまでそぎ落としたスーパースリム商人とも言うべきかもしれない。我々商売人の本来の姿を見出すことが出来るかもしれず、彼らにインタビューを試みた。
・ケース1 椅子の修理屋
「ここで23年ちかく仕事してるよ」とは道端で椅子の修理屋を開くジョゼ・リマ氏。
59歳の彼は、マンション警備員の仕事を辞め、親戚の元で5年修行をして後に独立、36歳でここに職場を構えたという。看板には「椅子の編み込みと張り合わせします」的な文言がある。通りがかる度、一心不乱に仕事に取り組む姿が印象的であり、今回の取材に至った。
一回70~120レアル(3,100~5,300円)の売上で、月収にして1,500レアル(66,400円)程の収入があるという。椅子だけでなく色んな物の修理を依頼してくるなじみの客も多くあるらしく、どうやらよろず修理屋としての機能も果たしているようだ。無秩序に見えて凛とした佇まいの彼の商店は、都会の雑踏の中で目立ちすぎるほどの異彩を放っている。
(Jardim Paulista地区)
・ケース2 花屋
「雨が降れば傘を売るさ」とは、弊社のすぐ目の前で花束を売るアントニオ・カルロス・ロドリゲス氏。
現在63歳の彼は、24年前に花屋の商売を思いつき、当時勤めていた服飾店を辞め、現在に至るまで花商売を続けている。職場からは少し離れたサントアマロ地区に妻と二人暮らしだ。
現在63歳の彼は、24年前に花屋の商売を思いつき、当時勤めていた服飾店を辞め、現在に至るまで花商売を続けている。職場からは少し離れたサントアマロ地区に妻と二人暮らしだ。
毎朝4時に青果市場へ出向き仕入れを行い、市バスで職場へと移動。花束づくりを進め、午前10時に販売開始と言うスケジュール。営業する日とそうでない日はまちまちだそうで、週に3~4日程度、日曜日と月曜日は休む。一束20レアル(890円)で、一日平均10本、イベントごとがあれば20本売れる感覚。月収でおおよそ3,000レアル(132,800円)もの収入があるそうで、廃棄する花束を奥様に持って帰れることを鑑みると「悪くない商売」とのことである。
雨が降れば傘を携えて渋滞中の車列に売り歩く彼の日焼けした人懐こい顔には、真のあきんどの証明としてのしわが、深く刻み込まれている。
(Jardim Paulista地区)
共に20年以上のキャリアを維持した男たちとの会話は、多くの示唆に富んだものであった。自分の仕事にもこのエッセンスを取り込もうと思った次第。