2017年5月16日火曜日

青空市「フェイラ」完全攻略ガイド

サンパウロの住宅街には、市営の青空市「フェイラ」が立つ。
これが頗る良くて、日本人駐在員の胃袋を満たしている。

運転免許、床屋、病院とこれまでいくつかのガイドコラムを残してきたが、恐らく最後となる今回、フェイラ完全ガイドを記したい。

サンパウロ市内のほぼ全てのエリアで、○○通りでは毎週日曜日に、△△通りでは毎週水曜日にという風に、曜日ごとに市が立つ場所が決められている。述べ500700mにわたって道路を封鎖し、青果・八百屋・魚屋・肉屋・卵屋、という様に屋台が軒を連ねる。市営であるからして登録制であり、また昼過ぎて終了する頃には市のスタッフである清掃者も現れるという決まりだ。

ちなみに道路は封鎖されるが、住人の車両は出入りできる様、配慮されている。だが不便であることに変わりはなく、恐らく日本では大クレームになる迷惑レベルだがそこはブラジル、寛容なのである。 

201759日現在、市内でも871軒の公設フェイラが認められている。日曜日だけでも下記マップの様に、市内に186軒のフェイラが立つという。


このフェイラ、値段はやや高いが品質は一般スーパーより確かということで、その需要は高い。一般に、ブラジルの大手スーパーは、おしなべて生鮮品の質が高くない(あくまで一般論で、勿論個体差はある)。このフェイラなら、売り子とface to faceで対話しながら選べるし、もし品物に瑕疵があれば、翌週同じ売り子が立っているのでクレームを付けることも出来るという利点もある。この辺りの事情は一般スーパーの競争が激しく質も高い日本とは大きく違う点と言えるだろう。



今回は、筆者がこれまで大変お世話になったパライゾ区金曜日のフェイラ『ALCINO BRAGA』を紹介する。


◆鶏卵◆
まずは、生卵シスターズだ。
 子供のいる家庭にとって、卵かけご飯ほど便利なものはない。というわけでサルモネラ菌を気にせず(・・・少なくとも我が家では一度も問題が無かった)に食べられる生卵、”Ovo caipira”を売ってくれるありがたい存在である。 二人とも日本語が出来る。

◆玉ねぎとにんにく◆
次に玉ねぎとニンニクであればこの人。
 実直な性格で、嘘が無い。例えば日本人好みの形の良い玉ねぎを5つほしければ、”Cinco graúdo(グラウード)”といえば見繕って袋に入れてくれるので楽だ。その時に手元を見ていなくても、ズルをしたりしないのも好感が持てる。


◆じゃがいも◆

ジャガイモはこの人。

学校がお休みになるとヤケに色っぽい娘さんもお店を手伝う。カレーなら白、フライドポテトなら赤を使う。


◆肉◆

次にお肉、ルイーズ一味の登場である。

向かって右手の白い服のお兄さんは、きまって「ボンジーア、サン!」と言う。

推測するに、Good morning, Sir! の意味で「○○さん」のサンを使っているのだと思われる。


日本語ではそういう使い方をしない訳だが、イチイチそれを訂正するのもヤボだし、ものすごく気の良い人なんで、そのまま聞き流している。第一いままで使い続けているということは、一度も駐在員の人達が修正しなかったわけだから、そこに冷や水を浴びせるような所業は尚のことゲスである。
カフェジーニョをくれるのも、買い物に一息いれるのに良い。


◆魚◆
お次はお魚、一番端まで歩いた日系人だらけのスタッフが並ぶココがお勧め。

日本語が通じるのでみなさん日本語で買い物している。そのとき旬のものや、どのように料理したらよいのかなどを教えてくれる様は、まるで日本と変わらない。サバ(cavalinha)は季節を選ぶため、あるときに買う。イカはビックリするほど高いが、そんなもんである。



尚、肉も魚もオーダー次第で骨や皮を取り除いてくれる。

骨はオッソ、皮はペリである。「取り除く」には動詞Tirar(チラール)を使う。
魚を三枚におろしてもらいたい場合、filé de xxx とオーダーする。ま、勿論 『サンマイ』で通じるわけだがw


◆野菜◆
葉もの野菜は、このマルコである。
ここでは白菜、青梗菜、大根、枝豆などを買う。この店には人参とかぼちゃが無いのでここで野菜全部ひと揃えとはいかないのが残念だが、マルコの葉モノは概ね品質が良い。

◆軽食スタンド◆
さすがはこの国の野菜・果実・鶏卵栽培に多くの功績をもたらした日系人(日系人が来る前まで、この国にはトウモロコシ、ジャガイモ、フェジョン豆栽培があったくらいで、野菜栽培はこの国の文化に無かった!)、どのフェイラでも数多くの日系人を見かける。その文化の延長線上にあると思われるのが、決まってフェイラの端っこに位置する軽食スタンド(カウドジカーナとパステウ屋)であり、これらも日系人の手になるものが多い。
筆者がブラジルで最も好きなドリンク、『カウド・ジ・カーナ』サトウキビジュース。
ご夫婦の背後にあるごぼうの様なものがさとうきび。これを機械で絞ったものにフルーツジュースを混ぜて飲む。フルーツは客が選ぶわけだが、ここではリモンをオススメする。(リモンは日本で言うところのライムで、ブラジルではあの緑のヤツをリモンと称する。ちなみに黄色いヤツはリモン・シシリアーノだ)

搾りたてのサトウキビのまろやかな甘さとリモンの爽やかな酸味が絶妙のバランスを醸し出し、一日のスタートに最も相応しい100%天然ドリンクなのである。これほど贅沢で滋味に富むドリンクが、かくも身近に存在する素晴らしさ、これぞまさにブラジルの豊かさの象徴である。

こちらはパステウ。ブラジル人の国民食。
ひき肉、チーズ、ソーセージなどの様々な具在をパイ生地で包んで揚げたもの。
大きさは10cm x 20cmくらいだ。
ブラジル人はとにかくパステウが大好きだ。
気軽にパクついている感じは、日本で言うとたこ焼きを屋台で食う感覚に似ていると言えるだろうか。
 
パステウはフェイラのスタンドでパクつくものと決まっている。
そしてそのパステウスタンドは日本人経営でないと、美味くないと相場が決まっているのだ。

◆むすび◆
書いているうちに涙が出そうだ。
つい先日まで日常だったものが、この先恐らくは二度と繰り返すことの無いものに変わるのだと思うと、この写真に出てきた人たちと交わした何気ないやりとりのすべてが愛おしく感じてしまう。

サンパウロ日本人駐在員の生活は、本当にこのフェイラに助けられている。ここでも改めて、先達の日本人移民の苦労に感謝しなければならないと心底思う。

そして最後に、このガイド4部作(運転免許床屋病院、フェイラ)が、駐在を命ぜられて慌てているご夫婦や、赴任直後のご家族の、幾ばくかの心の慰めになればと切に願って止まない。大丈夫ですよ、サンパウロはとても良いところですよ、と伝えたい。
 (シェア大歓迎です)




2017年5月12日金曜日

お礼


3年半前に高速道路で痙攣していた息子を空の救急車で通りかかって拾ってくれた救命士の方に、今日挨拶に行ってきました。本帰国が決まったら一度ご挨拶に行こうと、かねてから決めていたのでした。

(息子のいきさつはこちら



彼は、『こうしたフィードバックをくれる人は数少ないので、もちろん見返りを期待して毎日仕事をしている訳では決してありませんが、いまあの子が健康だと聞くのは、何よりの喜びです』と物静かに語ってくれました。

あの日は動揺していたのでろくに話す時間もありませんでしたし、なにしろポルトガル語も低レベルだったので、今回初めてこの方のお人柄に触れることが出来ました。あの時通りがかったのがこのKleberさんで本当に良かった。

これで心置きなく帰国できそうです。