2013年11月27日水曜日

一時帰国と家族呼び寄せと幼稚園とサン・シルベルトリ(São Silvestre)マラソン

気が付けば一時帰国で日本に出発した日から、ひと月が経った。
日本に帰って東京本社と実家に顔を出し、引っ越し作業をして家を空にし、25時間のフライトでとんぼ返りしたがその帰途には4歳前と1歳前の子供たちが加わった。こちらに着いてからしばらくは時差ボケの子供たちとの生活が始まった。家族との生活は想像を絶するタフさで、しばらくBlogを更新する力が無かった(カレー税とか歯医者とか、おちゃらけの内容はふとストレス発散みたいにして衝動的に書いたものだった)。

自分の想像が甘かったというべきか、今思えば独身でのサンパウロ生活は楽だった。病気などもあったが、時間管理が全て自分の思いのままと言う、実にお気楽な独身生活だったと言わざるを得ない。気が付けば結婚して以降一人暮らしに戻ったのは9年ぶりであって、独り身の自由度はかなり久々のものがあった。

往路つまりサンパウロから日本に向かうフライトは、通常のフライトのように出張報告書を作成する必要もなく、ただひとりで帰るだけの優雅な旅であって、映画を10本以上も見て満喫したので25時間のフライトもあっという間だった。だが帰りは違った。二人の子供たちが寝ない、食べない、歩きたい、次から次へと不満を呈してくるのでそれに対応したり、おむつを替えたり、泣く赤ん坊を抱っこして通路を散歩したり。それを見てお姉ちゃんも散歩したがるので対応したり・・・。この年代の子供二人を連れて12時間のフライトと13時間の計2本のフライトを敢行するということは、たとえトランジットで一晩ホテル泊を挟んだとしても非常にヘビーなものであった・・・、ということに乗ってから気が付いた。やっぱり想像力が、貧困だったのだ。

その分、妻に日本で負担を強いていたわけだ。これからの家族のサンパウロ生活を素敵なものにして、その埋め合わせをしたいと思っている。

家族が着いたら着いたで、いまは幼稚園探しに悪戦苦闘している。自分がサンパウロ独身時代に5軒下見をして予め決めておいた幼稚園は、妻と娘を伴った初回見学で彼らにダメ出しをされた。改めて見学の旅が始まった。手作り感があって、こぢんまりとしていてのどかで日本語率が高くて良いと父が思った場所は、母に言わせるとどうやら「違う」とのことだった。3~4歳の多感な娘の変化時期に5か月も留守にした自分は、彼女の感性を量るアンテナは持ち得ないということだと得心した。

ここサンパウロでは、日本語100%の幼稚園は無く、ある程度ポルトガル語環境下に子供を露出させることを覚悟しなければならない。方針としては日本語の語幹をまず育てたいと思っているので、なるべく外国語には触れさせたくないのだが、ある程度は仕方がないと腹をくくるしかなさそうだ。それよりはソフト面及び設備環境のより良いところをということで、スクールバスで自宅から35分程度の場所も視野に入れて改めてリサーチを始めている。環境の変化でただでさえナーバスになっている娘に、新しい幼稚園という追加のプレッシャーを与えることに対して親二人で戦々恐々としている日々だが、一般に言われるように「子供の適応力はすごいですよ」みたいなことに結果的になっていればと祈っている。

そんな状況下、健康維持のためのランニングだけは継続していた。そしてある知人から誘われて、大晦日のサンパウロ15kmマラソンにエントリーしてしまった。
http://www.saosilvestre.com.br/
「サン・シルベルトリ(São Silvestre)マラソン」だ。
とりあえずその知人と私とで日本人2人チームを作って、走る予定にしている。もっとメンバーを増やしたいとも思っている。日本を出発する前の私の考え方や生活からしてみれば信じられない変化で、我ながら驚きでもあるのだが、気が付けばいきおいでエントリーしていた。これも駐在開始→入院→健康マインドUP→ジョギング開始という環境の変化が背中を押したものだ。面白いムンド・ノーヴォを今まさに体験させてもらっている。ありがたいと思う。

ブラジルと言えばナマでしょ

ついに買いました。コレを。

オレンジジュース絞り機!




















この国の魅力はやはりフルーツの安さ。
どんな定食屋でも生絞りフルーツジュースは置いていて、昔ほどじゃないけど一杯¥200内外で飲めるというのが、この国の魅力だと思っている。
だから、これからフレッシュみかんをスーパーで大袋買ってきて、絞ろうと。
だいたい2個で100mlのジュースが絞れる。
フルーツは20個くらいで¥200~300、つまり1リットル絞るのに¥200~300。
こうして聞くとあれ、1リットルパック買うのと同じじゃん、みたいになるかもだけど、フレッシュだから当然めちゃくちゃウマイんです!!!
ありがたや、ブラジルの自然。

2013年11月9日土曜日

歯科医師のおとこ気

先日一時帰国した機会を利用して、歯科検診を受けに行った。横浜にある小さな街の歯科医なのだが、若き院長先生の説明が溌剌としていて、かつ指示がビシビシと的確で体育会系の職場の雰囲気があり、気に入って10年以上定期的に通い続けているところである。

なにしろ彼の自信に満ちた立ち居振る舞いが好きだ。処置をする前に必ず写真を見せ方針を説明、予め患者に確認を取ってから治療をスタートする。患者の立場に立ってコメントもしてくれ、双方合意のことしか行わないという、非常に民主的な歯科医なのである。コメントにしっかり時間もかける。そして治療の作業中にも他の台で待機している患者への対応について、歯科助手にビシビシと指示を飛ばすのである。

先生は6台程度ある治療台を全て埋め、そこで患者を待たせる。待合室が狭いという事情はあろうが、院に着いた患者は殆ど待つことなく、たちまちのうちに溌剌先生のパフォーマンスステージに上げられ、一人の聴衆となるのだ。溌剌先生は、助手には容赦ない。新人と思しき助手がなってないと、指導役の助手をバチっとその場で叱る。横で聞いてる患者としては多少いたたまれなくなるが、逆にその様な自信満々な主に削ってもらえると思うと、間違いはないのだろうとなんだか悪くない気もしてくるのである。

当然、先生の腕前も一流だ。痛みを和らげる処置は非常に繊細だ。自分はこんな優しいケアをしてくれる歯科医を見たことが無い。また、親知らずを2本やってもらったが、その際の大工仕事的な力技ももちろん一流であった。野球でいうと打ってよし投げてよし、柔道でいうと立ってよし寝てよしと言ったところか。ところでオマエは親知らずを他で抜いたことがあるのかと言う質問はこの際受け付けないことにする。

そんな先生は、6月に駐在に出発するときにも検診に行きいろんな話をしたし、最期に頑張ってと送り出してくれた。今回一時帰国で戻った時には「家族呼び戻しに戻ったんだね」みたいな話を向こうからイキナリしてくれるなど、ああ、10年も通うと先生とも深い仲になってきたなと熟成感みたなものを感じて心地よかった。

良かったのだけど、いつもと違うことが起きた。今回は先生がこの『10年来の常連で、今日は一時帰国で来ていて次回の来院は1年先になるかもしれない患者』の治療を、最後まで自ら担当してくれたのである。そう、あの歯石掃除まで。お察しの良い男性諸氏ならもうわかるでしょう、あの歯石掃除は、やっぱりゼッタイに若い助手さんじゃないとダメなのに。助手さんが奥の方をぐいーっと覗き込んだときにひょっとしてハプニング的にどこかが当たっちゃうんじゃないか、みたいなあのトキメキはつらい治療を耐え抜いた患者への最期のご褒美であるはずなのに・・・。

なのに、今回は先生がおとこ気を見せてくれて、全部仕上げてくれた。いままで、先生が自ら歯石掃除までしてくれたことなんて、一度もないのよ。人件費の高い院長手ずからお掃除だ。きっと助手さんがやるよりきれいになってるんだろう。本当にありがとう、先生。でもなんだろう、この胸にポッカリと空いた穴みたいな感傷は・・・。

カレー税

カレー税というものが、ある。
いや、そうした概念があったというべきか。

話は1999年、私が大学を卒業し会社に入社したころにさかのぼる。
勤務先は浜松町、入居した会社の独身寮は千葉県の津田沼と言うロケーションだった。

我がソウルフード・カレーハウスCoCo壱番屋は、現在関東で見られるようにはまだ進出しておらず、都内はおろか関東圏にぱらぱらと点在するのみだった。今でこそ会社の最寄駅である浜松町駅周辺に2店舗存在(浜松町駅北口店及び芝大門店)し、近接したロケーションにも関わらず高い商品力からいずれの店も人気を博している訳であるが、当時はそんな夢のようなことは望むべくもなく、私の通勤経路に最寄りの店舗はと言えば、今やマニアの間で影の旗艦店と噂される秋葉原店であった。

通勤定期は浜松町=津田沼で購入しており、秋葉原駅は定期券の圏外となる。つまり秋葉原で途中下車してCoCo壱のカレーを食すとなると、行って来いで130円×2つまり260円の余計な支出が発生することになる。260円と言えば人気トッピングのほうれん草(200円)やロースカツ(250円)を乗せても釣りが来る、もっとわかりやすく言えば、オリジナルドレッシングと絶妙にマッチすることでつとに有名なツナサラダ(280円)に届こうかと言う規模感の金額であり、それはもはやせっかくCoCo壱を食いに行くのになぜトッピングの費用が歩留まらねばならぬのだという自己矛盾というか焦燥感すら感じさせる金額であった。

といった気持ちと訣別する、もしくはある一定の客観性を持たせたいがために、私が自らの中で生み出した概念、これが、カレー税である。つまりこの260円はCoCo壱のカレーを食うのに必要な税金であり、通勤経路のアヤでたまたま駅と店舗が一致しない不幸な人は皆一様に負担しているものであって、仕方のないものなのだ。寧ろ、自分はそうした障壁をもろともしないでブランドを支持しようという熱狂的なファンであることの矜持すら感じさせる、そんな概念、それがカレー税。喜んで納めようではないか。