2014年7月22日火曜日

ミスト・ケンチという食べ物

ブラジルの食文化が好きだ。
シュラスコやカイピリーニャは既に日本でも有名だが、どちらかというとパーティメシ的な位置づけで、毎日食べたり飲んだりするものではない。むしろこちらの人々のなんでもない日常食に、素晴らしいものが隠れているところがとても好きだ。

ミスト・ケンチという食べ物がある。
直訳すると意味は、ミックス・ホットで、つまりホットサンドだ。ハムとチーズをサンドイッチにして加温したものだ。反対にミスト・フリオ=ミックス・コールドもあるが、これは加温していないメニューの名前だ。これがすこぶる安くてうまい。こちらの人々が朝食を食べるパダリアと呼ばれるパン屋さんで出してくれ、だいたい400円くらいだろうか。ポンジケージョ、コシーニャと共に僕のお気に入りの一つで、良く食べている。

あんまり気に入ったので家にサンドイッシェイラというホットサンド器を導入した。シンプルな機械だが、たしか4,500円くらいしたか。ブラジルの家電は高いのである。だがこれは価値ある投資だった。


























朝ランニングした後、これを開いて食パン2枚、スライスチーズ4枚、ハム2枚を、そしてまた食パン2枚を乗せ、閉めてスイッチを入れる。シャワーを浴びる。出来上がる。









































スイッチ切る、着替える、出来上がった2個を取り出して(溶けだしたチーズなんかをほじほじしたりしてから)キッチンペーパーで包み、一つはジップロックに入れて持って行く、一つはかぶりつきながら会社に向けて歩きはじめる。食べ終わる頃にちょうど会社に着いて、残りのもう一つを席で食べる。これがまたすこぶる上手い。シャワーを浴びている間に出来上がっているという手軽さも絶妙で、しかも閉めておくだけでフツーの食パンがウソみたいにかっこよく焼けるという寸法で、これまたとても嬉しいのである。

2014年7月14日月曜日

チャンスを取りに行く

発展途上の僕のゴルフ。ブラジルで再開してそろそろ1か月が経とうとしていた今日、まるで何かに導かれるように、素晴らしい体験をさせてもらったという話。

昨日土曜日は、同じマンションの知り合いの人と二人で27ホールラウンドしたが、今日は一緒に回る人が居ないことがわかっていた。昨日掴みかかった「何か」のおさらいをしようと、朝08:00過ぎにゴルフ場に到着してからすぐに一人で練習を始めるつもりだった。キャディマスターからゴルフバッグを受け取り、脇にあるいつもの練習場に向かった。練習球を機械から出そうとしたくらいのタイミングで、一人のキャディーが僕に声をかけてきた。曰く、一緒に回る人を探している人が居て、その人も一人なのだという。二人でラウンドしてみてはどうかと。

正直見ず知らずの人と二人きりで回るには僕の腕前はまだあまりにもお粗末だし、肝心の練習もまだ一球も打っていない状況でいきなりティーショットに向かうのは甚だ憚られた。だがこれも何かの縁、怖いけど受けてみようと思い、承諾し、その人の元へ向かった。するとアプローチ練習場で淡々と綺麗で柔らかいショットを繰り返していた60代と思しき小柄の良く日焼けした日系人風の人がこちらを向いてヨロシクと挨拶をした。彼こそは、サンパウロで最も成功している日本人と言われている有名な企業経営者だった。

このゴルフクラブの会員だとは聞いていたが、まさかその方と一緒に二人で回るとは思ってもいなかった。自己紹介もそこそこに、ラウンドが始まる。自分のショットでいっぱいイッパイの僕は、正直会話どころじゃなかった訳だが、このところの練習が少し効いていたか、なんとかその方と一緒に歩きながら会話が出来る程度の場所に、都度ボールは生きていてくれた。そして従業員800名規模と言われるその企業を異国の地で切り盛りする経営者の話だ、ひとつも聞き漏らすまいと集中したし、そうしなくても引き込まれるオーラがあった。もちろんその方は余裕のパープレイである。

練習のつもりで軽くゴルフ場に来てみたら、突然エラく緊張する事態に巻き込まれてしまった訳だが、聞けばその方も今日偶然一人状態になってしまったいきさつがあった様で、どうも運命的なものを感じて嬉しくなった。そしてもう一つ嬉しかったのが、ふとした間にその方から、「君は最近の若者にしちゃ珍しく気骨のあるヤツだな」とのお言葉を頂いたことだ。もはや「若者」というカテゴリではない自分だが、まぁ、大先輩から見たら所詮は小僧なので、ありがとうございますと受け止めさせて頂いた。ゴルフ+ビッグネームというダブル緊張の中、コトバ少ななやりとりしかしていない中で、何がそう感じさせたかはわからないが、彼の様な永住組の日本人からしてみると、近頃の駐在員は線が細いやに映っている様であった。そんな中で雰囲気が少し違う人間として受け止めて頂いたみたいであるのは、素直にうれしかった。ましてや百戦錬磨の経営者のお見立てであるから尚のことである。

コース途中でカートに乗ってふらっと現れたお仲間も一名参加され、パーティは3名になった。お仲間も遊び上手な雰囲気を醸し出しており、味も深みもある60代二人に囲まれてのラウンドとなった。

人生論からゴルフ論まで、その方のトークは本当に気さくで、気が付けば僕をチャン付けで呼び、「下手くそ」とけなしつつもたまに出る良いショットにはこまめに褒め言葉をくれた。そしてなんといっても僕のプレーを良く見ていてくれていた。超上級者のその方のショットの中でも、とりわけアプローチが美しかったので、秘訣を尋ねると、「18ホール回ったあとでレッスンしてあげるよ」とのことだった。

良くも悪くも色んな収穫のあったラウンドを終えて、アプローチレッスンの施しを受けることとなった。30分ほどのレッスンは未だかつてない発見の連続であり、教えてもらった3点のコツを実践するだけで自分でも驚くほど柔らかいボールが打てるようになった。説明も至極腑に落ちる。その後、その方は別のお仲間ともう9ホール回るとのことであったが、練習セットをそのまま使って良いと言う。僕はその場に留まって、面白い様に連発出来る自分じゃないみたいなアプローチを忘れない様に必死に3時間半、借りた練習道具(綺麗なボール50個とボール集めしやすい道具達!)で練習した。今日一日で、飛躍的に進歩できたと思える。最後にラウンドを終えて戻ってきたその方は僕に名刺をくれて去っていった。上手な人達の会があるとのことで、それに声を掛けてくれるとのことだった。それはそれで気の遠くなるほどのプレッシャーで引き続き気の引き締まることだと思いつつも、今日みたいに気後れする様なお誘いが来た時こそ受けて立てば良いことがあるはずだと思い直した。偶然と挑戦が引き起こした諸々に、感謝の一日だった。