「ブラジルの蜂はガチで凶暴っすから、マジ気を付けて下さい」
電話口の向こうで蜂産品原料担当の後輩が僕にこうアドバイスした。
世界中の養蜂家を訪ねている後輩によると、ブラジルの蜂はとりわけ攻撃性が高く、防護服に少しでも隙間があれば必ず見つけて刺してくるとのこと。ほほぅ、それ故にブラジルのプロポリスは世界最強成分を作り出すのかと答えると、それはまた別の話です、まぁ、気を付けて行ってらっしゃいということなんだそうだ。ともあれ、これまでコーヒーやらお茶やらの産地は訪ね歩いてきた自分だが、養蜂家を訪ねるというのは人生初の経験であったから、東京に電話して産地訪問を前にしたアドバイスを乞うたというわけだった。訪ねるはミナスジェライス州の州都ベロ・オリゾンチから西に車で3時間走ったあたりである。
世界中の養蜂家を訪ねている後輩によると、ブラジルの蜂はとりわけ攻撃性が高く、防護服に少しでも隙間があれば必ず見つけて刺してくるとのこと。ほほぅ、それ故にブラジルのプロポリスは世界最強成分を作り出すのかと答えると、それはまた別の話です、まぁ、気を付けて行ってらっしゃいということなんだそうだ。ともあれ、これまでコーヒーやらお茶やらの産地は訪ね歩いてきた自分だが、養蜂家を訪ねるというのは人生初の経験であったから、東京に電話して産地訪問を前にしたアドバイスを乞うたというわけだった。訪ねるはミナスジェライス州の州都ベロ・オリゾンチから西に車で3時間走ったあたりである。
■ハニーハントならぬプロポリスハント
後輩のアドバイスによると、これはかなり重要らしいので気を付けねばならない。この収穫作業には同行しなかったプロポリスメーカーの女社長も言っていた。くれぐれも防護服を着る際のジーンズの裾は必ず靴下でカバーしてからにしなさいと。手袋と防護服の袖の関係も然り。蜂が侵入できない様にしっかりと幾重にもかぶせなさいと。私は同行しないけど、あの人(女社長のダンナ)はすぐに準備をはしょるから、くれぐれも自分でしっかりおやんなさいとのことだった。実際、ダンナ氏は恐るべき軽装で採取に臨み、最後にイテッ、イテッ、と玄人とは思えないパニック状態になって車に戻ったという逸話もついてきた。
防護服を着終わると、案内人がなにやら煙の良く出るいぐさみたいな物体に火を点けてふいご状の機材で煙をまき散らしながら先頭に立って歩き出す。それにしたがってぞろぞろと歩いて行くと、おくゆかしくたたずむ巣箱が10個ほど。見るからにヤバそうな蜂がわーんと寄って来る。顔面のプロテクターにバシバシぶつかってきて、他の産地は知らないけれど確かにこれは凶暴そうだなと感じさせる殺気を持っている。
しかしあの煙はなんの意味があるのだろうと最後まで聞くのを忘れてしまったのだけれど、厳かな雰囲気を作り出すのに一役買ってはいた。
■プロポリスとは
そもそもプロポリスっていったい何なんだ?なんでも、弊社はそのプロポリスのカタマリをブラジルから仕入れ、健康食品メーカーに卸しているようだ。その原料採取の現場を今回視察する機会に恵まれたのだ。
この巣箱中央部(白手袋の指先)に作られたスリットの内部に出来ている緑色の粘土的なもの、これがプロポリスだ。
この様にしてナイフで削り出し、ビローンと採取する、これがプロポリスの原塊。感触は『少し乾いた粘土』とか、『厚みのないカレールー』とでも表現しようか、とにかくかつて見たことのない物体である。匂いはあからさまにあのプロポリス臭がする。こうして養蜂家はプロポリスを収穫し、エキスメーカーの工場へと運ぶわけである。
■ハチミツは腐らない
そもそも蜂関連商品には、ハチミツ、ローヤルゼリー、プロポリスがある。
知らなかったのだけれど、ハチミツは腐らない食品なのだという。エジプトのピラミッドにも密壺が埋葬されているのが発見され、その成分は保ったままであったと言う。それだけ、密の糖度が高いということと、巣の内部の抗菌性が高いということが言えるのだろう。
ハチミツは働き蜂がせっせと運んだ花の蜜が糖度を上げた形で保管されているもので、巣の中の一般大衆向け食事として供されるもの。ローヤルゼリーは働き蜂が口から分泌する女王蜂専用の乳液食、そしてプロポリスは巣の入口を外敵や細菌の侵入から守るガードつまり抗菌建材であり抗菌フィルターの役目をしているのだという。
前述の如く、巣箱のスリットを開ければ巣の内部が外的要素に脅かされるため、働き蜂はせっせと入口を埋めるべく樹脂を運ぶ。その間はハチミツの貯蔵は進まない。プロポリス生産家の巣箱では、壁が仕上がる頃には採取され、またその空いた空間を埋めるべくせっせと壁が造られる、を繰り返すのであるからして、内部にハチミツは貯蔵されにくいのだという。ということで、養蜂家によってプロポリスメインのところと、ハチミツ狙いのところ、はたまた手間のかかるロイヤルゼリー狙いという風に、何を目指すかでポリシーがハッキリ分かれるのだという。これまた知らなかった。巣箱を開ければ全部一緒に詰まっているものなのだと安易に考えていたものだ。
■ブラジルのプロポリス成分は世界最強
ミナスジェライス州に自生する植物「アレクリン」。ミナスジェライス州の中でも限られたエリアにしか自生しない植物、「アレクリン」。
これこそが、ブラジルのプロポリスを世界最強たらしめている主役である。ローズマリーに似たこの植物の、葉の先から分泌される樹液に抗菌・抗酸化・抗炎症機能が含まれている。この樹液を働き蜂が集め、唾液と共に巣箱の壁に塗り固めていく、これがプロポリス。とりわけブラジルミナスジェライス州産のプロポリスは、その有効成分の高さから「グリーン・プロポリス」として世界最高値で取引されているのだという。
これこそが、ブラジルのプロポリスを世界最強たらしめている主役である。ローズマリーに似たこの植物の、葉の先から分泌される樹液に抗菌・抗酸化・抗炎症機能が含まれている。この樹液を働き蜂が集め、唾液と共に巣箱の壁に塗り固めていく、これがプロポリス。とりわけブラジルミナスジェライス州産のプロポリスは、その有効成分の高さから「グリーン・プロポリス」として世界最高値で取引されているのだという。
しかしこの植物、そんなにスゴイらしいのに、たたずまいは驚くほど地味だった。
■みつばちの神秘とブラジルの農業
今回、うっそうと茂るユーカリの木立の中を防護服に蜜を包みふいごの煙と共に分け入って巣箱を目の当たりにして、なんと原始的なことかと驚いた。ブラジルという国は、農業先進国であって、如何に工業的な農業を推進するかに血道を上げている国なのに、ここにはこんなにマニュアルな収穫絵図が残されていたとは。そしてそのマニュアル収穫を可能たらしめるものづくりの製造工程は、なんと無数の蜂に支えられているのだという。
みつばちというものは、つくづく神秘的だ。植物の葉にうっすらと浮かび上がる樹液からプロポリスという個体を紡ぎだす膨大成る作業量。そしてその場で少し拝借した、まるかじりハチミツの美味しさ。それぞれの成果物の成分の完璧さ・・・。まさに神の所業ともいうべきその仕事を、統率のとれた組織で取り組む姿。かような農業大国の片隅で、意外にも人知を超えた存在に触れた気がしたのである。
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