マンションのセキュリティ上、この国には必ずポルテイロがいる。ポルテイロとはつまり門番で、遮光されたガラスの内側に常駐している人たちで、徒歩であっても車であっても、入出場には必ずこのポルテイロを媒介としたドアの開閉作業を経なければならない。
そのドアはだいたい二重構造になっていて、一枚あけてもらって中間地帯にまず入場、一枚目を閉じると二枚目を開けてくれて中に入れる。すべてポルテイロの手作業であるからして、実にうやうやしいというか時間がかかる。たまにポルテイロが寝ている(本人たちは否定するが)と、気が付いてもらえずにインターホンみたいなもので呼びかけなければならなくなったりして、さらに手間がかかる。
車でも住人はリモコンを持たされていて、外からリモコンを押すとポルテイロがカメラでナンバーと運転者を目視確認、手動でシャッターを開けるという流れだ。もちろんシャッターは二枚構造で、一枚目の開閉の段階で問題を認めた場合、二枚目を開けないという選択肢が残されている寸法だ。リモコンを押すと自動で開くわけではないところがミソだ。サンパウロではカージャックされた住人が銃口を向けられたまま自分のマンションの地下駐車場に誘導され、犯人が侵入、その後マンション全体が根こそぎ強盗に遭ったという事例などがあるらしく、こうしたセキュリティシステムが一般的になっているという。
家具の納入業者や引っ越し業者なども、身分証明書の提示をしてポルテイロが登録処理をする。その後、内線電話をかけて住人の入場承諾を経なければ上がれないという仕組みである。オフィスビルでも初めての人間は面倒な登録作業を経なければ入ることが出来ない。日本でもこうした仕組みは多数存在するが、どうもブラジルではより手がかかる形式になっているような気がしてならない。そしてこうしたシステムが完全に防犯に役立っているかと言うとそうでもない気がしたりする。。。
ま、いずれにせよ、住人とポルテイロ達との接点は非常に多くなり、従って日常的な挨拶、立ち話は多くなるという背景がある。普段は遮光ガラスを通しての挨拶や会話になるので、向こうの顔は見えない。交代時にばったり顔を合わせたりしない限り、こちらは向こうの顔を認識できないのである。向こうはエレベーター、廊下にある監視カメラで全てこちら側の様子を見ているのでよくわかっているのである。ウチの物件には4人のポルテイロ+支配人的なジェラドールの5名シフトで回している。
そんな中、ある日聞きなれない声がしたので誰だと聞くと、新入りだという。名前を聞くとハイ・ムンドというらしい。よろしくハイ・ムンドと言って別れたのだが、元気がなく声の小さい人だったので、えらく暗いヤツが入ったものだ、他のみんなはものすごく元気な職場だから、アイツ大丈夫かなと思った。それから1週間、ちょくちょくハイ・ムンドの勤務時間に出くわして、相変わらずの元気の無さだった。
暫くしてジェラドールのエジバン氏が居たので捕まえて、おい、新しいハイ・ムンド、元気がないんじゃないの?大丈夫か?なんて軽く聞いたところ、『そんなヤツは居ないよ』とのこと。その瞬間、頭の中で世にも奇妙な物語(←古い)のBGMが鳴りはじめたのを軽く認めつつ、「いやいや、ほら、声の小さいヤツで、朝シフトで居るでしょ」『だから居ないって』なんてやりとりをしてその場は終わった。
次の日に親しいポルテイロ、夕方シフトのジェナーリオ君を通るときにハイ・ムンドについて聞いたところ、「誰それ?朝シフトのマルコに騙されてんじゃないの?ウヒヒーかわいそうに」とのこと。だけどマルコだったら声がデカくて特徴あるからゼッタイわかるしと思って、心底不思議に思って次にマルコに会ったら確認しようと思って次の朝、門を通過するときに居たのはハイ・ムンドだった。
「おはよう、誰?」
『ハイ・ムンドだ(かすれたような小さい声)』
「新入りのハイ・ムンドか?」
『そうだ(聞こえるか聞こえないか)』
「何故声が小さい?」
『・・・風邪をひいている(消え入りそうな声)』
「・・・・・」
『・・・・・』
「マルコ」
『(!)・・・・・』
「おい、マルコだろ」
『・・・・・・・・・・(汗)。』
「マルコ、うそつき」
『おー、アミーゴー、許してくれー、冗談だよー』
「声が違ったからわからなかったぜ、お互いにアホだな」
『ゲヒャゲヒャゲヒャ』
ということで正体がわかったのだが、いったい何がしたかったのか。
ただ単にからかいたかっただけなんだろう、でもあまりにうまく行ってしまったから引けなくなったというところか。愉快な人である。そしてまた、人を信じやすい自分も改めて浮き彫りに。アブナイアブナイ。世渡り気を付けなきゃ。
そのドアはだいたい二重構造になっていて、一枚あけてもらって中間地帯にまず入場、一枚目を閉じると二枚目を開けてくれて中に入れる。すべてポルテイロの手作業であるからして、実にうやうやしいというか時間がかかる。たまにポルテイロが寝ている(本人たちは否定するが)と、気が付いてもらえずにインターホンみたいなもので呼びかけなければならなくなったりして、さらに手間がかかる。
車でも住人はリモコンを持たされていて、外からリモコンを押すとポルテイロがカメラでナンバーと運転者を目視確認、手動でシャッターを開けるという流れだ。もちろんシャッターは二枚構造で、一枚目の開閉の段階で問題を認めた場合、二枚目を開けないという選択肢が残されている寸法だ。リモコンを押すと自動で開くわけではないところがミソだ。サンパウロではカージャックされた住人が銃口を向けられたまま自分のマンションの地下駐車場に誘導され、犯人が侵入、その後マンション全体が根こそぎ強盗に遭ったという事例などがあるらしく、こうしたセキュリティシステムが一般的になっているという。
家具の納入業者や引っ越し業者なども、身分証明書の提示をしてポルテイロが登録処理をする。その後、内線電話をかけて住人の入場承諾を経なければ上がれないという仕組みである。オフィスビルでも初めての人間は面倒な登録作業を経なければ入ることが出来ない。日本でもこうした仕組みは多数存在するが、どうもブラジルではより手がかかる形式になっているような気がしてならない。そしてこうしたシステムが完全に防犯に役立っているかと言うとそうでもない気がしたりする。。。
ま、いずれにせよ、住人とポルテイロ達との接点は非常に多くなり、従って日常的な挨拶、立ち話は多くなるという背景がある。普段は遮光ガラスを通しての挨拶や会話になるので、向こうの顔は見えない。交代時にばったり顔を合わせたりしない限り、こちらは向こうの顔を認識できないのである。向こうはエレベーター、廊下にある監視カメラで全てこちら側の様子を見ているのでよくわかっているのである。ウチの物件には4人のポルテイロ+支配人的なジェラドールの5名シフトで回している。
そんな中、ある日聞きなれない声がしたので誰だと聞くと、新入りだという。名前を聞くとハイ・ムンドというらしい。よろしくハイ・ムンドと言って別れたのだが、元気がなく声の小さい人だったので、えらく暗いヤツが入ったものだ、他のみんなはものすごく元気な職場だから、アイツ大丈夫かなと思った。それから1週間、ちょくちょくハイ・ムンドの勤務時間に出くわして、相変わらずの元気の無さだった。
暫くしてジェラドールのエジバン氏が居たので捕まえて、おい、新しいハイ・ムンド、元気がないんじゃないの?大丈夫か?なんて軽く聞いたところ、『そんなヤツは居ないよ』とのこと。その瞬間、頭の中で世にも奇妙な物語(←古い)のBGMが鳴りはじめたのを軽く認めつつ、「いやいや、ほら、声の小さいヤツで、朝シフトで居るでしょ」『だから居ないって』なんてやりとりをしてその場は終わった。
次の日に親しいポルテイロ、夕方シフトのジェナーリオ君を通るときにハイ・ムンドについて聞いたところ、「誰それ?朝シフトのマルコに騙されてんじゃないの?ウヒヒーかわいそうに」とのこと。だけどマルコだったら声がデカくて特徴あるからゼッタイわかるしと思って、心底不思議に思って次にマルコに会ったら確認しようと思って次の朝、門を通過するときに居たのはハイ・ムンドだった。
「おはよう、誰?」
『ハイ・ムンドだ(かすれたような小さい声)』
「新入りのハイ・ムンドか?」
『そうだ(聞こえるか聞こえないか)』
「何故声が小さい?」
『・・・風邪をひいている(消え入りそうな声)』
「・・・・・」
『・・・・・』
「マルコ」
『(!)・・・・・』
「おい、マルコだろ」
『・・・・・・・・・・(汗)。』
「マルコ、うそつき」
『おー、アミーゴー、許してくれー、冗談だよー』
「声が違ったからわからなかったぜ、お互いにアホだな」
『ゲヒャゲヒャゲヒャ』
ということで正体がわかったのだが、いったい何がしたかったのか。
ただ単にからかいたかっただけなんだろう、でもあまりにうまく行ってしまったから引けなくなったというところか。愉快な人である。そしてまた、人を信じやすい自分も改めて浮き彫りに。アブナイアブナイ。世渡り気を付けなきゃ。
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