私 「レシート下さい」
店員 「・・・」
私が小学校3年生のころ、お店で発生したやりとりである。
無言の店員は、めんどくさいことを顔に出している。
このころ、母が足を骨折して2週間ほど入院していた。
自分が入院不在の期間中、家庭の会計の実態を把握する為に、母が子供たちに「何かを買った際にはレシートをもらいなさい」と命じていたのであった。
後で聞けば、母は「大きな金額のものだけでよかったのに」とのことだったのだが、そんなことは知る由もないのである。息子はただひたすらにせっせすら意味も分からずレシートを集めるのである。100円のポテトチップスを買う時にも、50円のガリガリ君的なアイスを買う時にも。近所の酒屋でも、文房具屋でも。
ほどなくして私にはあだ名がつくことになる。「レシート下さいマン」というものである。近所の商店にはだいたい同じような学年の子供が居るもので、たまたまレジ番をするそれらの友人経由でこのエピソードは伝わったものと思われる。
僕はそのあだ名に気づいた後も、母が退院するまではレシートの請求・収集を止めなかった。まとまった金額でなくとも忠実にレシートを集め続けた私。妙ちくりんなあだ名と一緒にクラスの友達に馬鹿にされてもレシートを集め続けた私。家計の為になる、母の為になるとの一心で集め続けたレシート。
退院後の母に、褒めてもらったことがただただ嬉しかったことをいまでも覚えている。
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