むかしは早食いだった。
他の食べ方を知らなかった。ゆっくりしようとしても、無理だった。
それくらいに胃袋を満たす作業を早くしなければ満足しなかった。
肉ひとかけらで茶碗半杯のメシをかきこむような、そんなのが大好きだったのだ。30代になってもそういうことをしていた。
ブラジルに来てからダイエットに取り組んだこともあり、コメを減らして野菜中心の食事に切り替えた。ここブラジルではポルキロという量り売りスタイルのランチ形態がメジャーで、これが野菜摂取の面ですこぶる優れたシステムなのである。
■ポルキロ
というのも、だいたいどこでも置いてあるものは似通っていて、サラダ→冷たいオードブル→温かいオードブル→米やピラフ→肉・魚→デザートと順に回って好きなだけ取っていく。最後に計量して、その店ごとに決まっている単価に掛け合わせた金額を支払うという寸法。店ごとに微妙に味付けや調理スタイルに色があるので、客はその日の気分で店を変えるわけだが、毎日どこかのポルキロスタイルなんてこともざらだそうだ。
対抗馬はランショネッチというローカルな定食屋になるのだが、こちらは量もガッツリあって比較的価格も安いので、しっかり食べたい人や男性が好む傾向にあって、逆にポルキロはヘルスコンシャスな層に支持されている。
また、ポルキロの優れているところは、多く食べたい人とそうでない人、肉を食べたい人と野菜な気分の人、男性と女性、異なる趣向の友達・同僚と一緒に入店できるところである。
■野菜から入って焦らすテクニック
ポルキロの野菜はバリエーションが豊富だ。レタス・トマト的な生野菜や、一度火を通したズッキーニ、ニンジン、マリネされたナスとオリーブ、なんてメニューがバリエーション豊かに並ぶ。陳列台の後半には、温野菜も登場する。この野菜をガッツリ食えば、後半のメインに到達する頃には腹もだいぶくちてきて、栄養も取れるは米と肉は減らせるわで一石二鳥なのである。そしてなんといっても野菜は軽いからお財布にも優しい。
むかしの自分から考えてみると信じられない思いであるが、今では野菜大好き人間になった。コメはゼロにしても平気だ。これはポルキロの存在があるブラジル生活だからこそ成せる業なのだと思う。
最初は肉をガマンして野菜を無理して多くなんて思っていたものだが、いまでは野菜をたっぷり摂るのが趣味みたいになってきて、腹の減った自分を焦らすことに一種の快感を覚えるような、妙な感覚が定着したわけなのだ。必定、食べるスピードもゆったりとしたものになり、いいことずくめだ。毎日のランニングは継続しているが、このポルキロの充実野菜達が、さらに自分をヘルシーに、そして軽量にさせている気がするのである。
ブラジルと言えば肉を想像する向きも多かろうが、実はこの国は野菜(それからフルーツも天国)の宝庫でもあったのだ。40手前にしてやっと早食いの自分と決別できた様である。


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