2016年10月26日水曜日

タクシスタ・メネゼス (Sr. Menezes)

タクシスタとは、タクシードライバーのことである。

彼と出会ったのは、2013年の11月頃だった。もうかれこれ3年近くの付き合いになる。
彼の名はメネゼス(Menezes)。私がブラジルで最も信頼するタクシードライバーだ。

■なれそめ
自宅最寄りのタクシーポント(タクシー乗り場・・・免許制で一軒1015台の枠がある)認定のドライバーである彼は、僕が家具屋で買った家具を引取りに行くときに利用したのが初めての出会いだった。

週末に自分の車で家具屋に行き、キッチンワゴンを買ったのだがトランクに入らなかったという珍事があり、あくる月曜日の夜、その大物家具の引取りの為だけに出直したのだった。買ったその店で配送を頼むよりタクシー代を支払った方が安く済むし、『朝の9時~夕方の18時の間』などというふざけた配送期間を待つよりはるかにストレスが低いからである。

乗って挨拶を交わし、私は「どこどこの店に行って家具を引き取るから待っていてほしい、そのあとまたウチに戻って来るので往復乗せてほしい」とオーダー。メネゼスはわかったとのことで走り出した。ここまでは普通だった。驚いたのはその後だった。

お店について家具を引取りに行って戻ってくる間、彼は料金メーターを止めていたのだ。
こちらからは何も依頼していない。私はその瞬間、彼に色んな仕事を依頼することに決めた。そしてその判断は誤っていなかった。メネゼスが約束を違えたことはこの3年の間、一度もないのだ。

■束縛しない関係性
私は仕事でもプライベートでも、ほぼ全てのタクシー仕事を彼に集めて発注した。空港に行くとき、客先へ外出するとき、家族が私の仕事中にどこかへ行かねばならないときなどなど、実に様々なシーンで彼に電話して仕事を依頼した。遠出の場合は前もって予約して、彼のスケジューリングを助けた。他の会社同僚からの遠出の出張依頼も、彼に回すよう斡旋した

とりわけ便利なのは、事務所から空港に発つお客さんを乗せて行ってもらう時だった。流しのタクシー捕まえてさようならでは心もとない。ポルトガル語しかできないメネゼスだが、問題があれば電話で協議できる良さがある。もちろんお抱えではないので、彼の都合が合わなければ他に頼むという、お互いに束縛の無い柔軟な関係性だ

■アプリの参入
その彼が、この1年で収入半減の危機に直面しているという。
UBERとその他タクシーアプリによる一般車の参入により、供給が急増したのだ。
私の様なガイジンにとっては、流しのタクシーに乗って問題が起こってその都度ハッスルするのはたくさんだから、メネゼスの様な固定のタクシーを利用するメリットがまだある。だがブラジル人同僚には、もはや既存のタクシーには何のメリットも無く、もっぱらUBER利用なのだそうだ。規制業種、既得権益、守られた職種は今後ますます競争にさらされる流れにあるだろう。


今日も自家用車を車検に出した帰り道、事務所まで40分の道のりをメネゼスに送ってもらった。アッサリ説明でも現地集合してくれて、勿論約束の5分前到着思えばこの車を買ったときも、メネゼスに乗せてもらって同じディーラーに車を取りに行ったものだ彼は私のブラジル人生のwitnessとして寄り添ってくれている。非常に口下手なメネゼスだが、今後も規制緩和の荒波を乗り越え、ドライバー業で成功し続けることを祈ってやまない。

0 件のコメント:

コメントを投稿